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舞踊評論
丹野賢一、山田うん「SSW」 既成概念超える 刺激的パフォーマンス

琉球新報 2001年7月12日朝刊
文化部・金城倫明

琉球新報 PHOTO  丹野賢一、山田うんの合同ソロプロジェクト「SSW(ショート・ソロ・ワークス)」(主催・同実行委)は、衝撃的だった。ダンスの既成概念を超え、さまざまな芸術表現を融合してつくられるパフォーマンスの沖縄初公演が四日、浦添市の演劇空間「アトリエ大地」で行われた。満員の若者たちにまったく新しい現代の身体表現を見せた。沖縄の現代アートシーンに一石を投じたといえそうだ。

●新たな潮流

 一九六〇年代に始まった土方巽の「暗黒舞踏」など、「舞踏」あるいは「前衛舞踏」呼ばれていたものが、今では、ソロパフォーマンスとかコンテンポラリーダンスと呼ばれている。八〇、九〇年代以降、既存の方法、技術と違うムーブメントが広がってきた。これらの舞台のニーズが東京、関西、海外に限られ、沖縄では、あまり知られることがなかった。
 今回は、丹野、山田という作風のまったく異なる異色の組み合わせで、十五分以内のそれぞれの作品が交互に演じられた。初日で魅せられ、関連イベントとして、前島アートセンター(那覇市)でのフォーラム、桜坂プランタ(同)でのライブと三日連続で鑑賞する羽目になった。
 丹野は、田中泯の「舞塾」出身。ダンスというカテゴリーではくくれない独自の世界を展開してきた。  丹野の公演は三種類ある。一つは、屋内外で三千個のコンクリートブロック、有刺鉄線、赤い池、ピンクの粉、球体、工業部品のボルトなどを使用して「もの」と絡む行為による作品。二つ目は、舞台装置を廃し、衣装とメイクにより、自分自身が異形のオリジナルキャラクターを演じる。三つ目は、空き地、倉庫、廃虚、洞くつ、川などロケーションから考える公演だ。
 一方、山田は、新体操やモダンダンスを基礎として、さまざまなダンスの影響を受けてきた。
 「ダンスは日常のささいな断片を切り取ったり、再生したり、リピートしたりしているうち、生まれる偶然の積み重ねのようなもの」という。しかし、その順序や構成、全体のイメージをダンスとあてはめない。「動きやリズムが生まれた瞬間がダンスだ」と語る。

●音楽との共鳴

 公演で丹野、山田ともに三作を披露。丹野は、ブーツ、レザーのコートで登場。強烈な音楽。照明操作の中で自己破壊的とも思えるえたいの知れぬ踊りを繰り広げる。二作目はピンクに黒い水玉のコート。照明で背後に大きな影。三作目は、ぼろをまとい舞台をさまよい倒れる。
 翌日も、前島アートセンターで行われたフォーラムのデモンストレーションで丹野のパフォーマスを見た。ゾンビのように人間性を失った男が、雨上がりの屋上でばったんばったん何回も倒れる事を繰り返す。満月の屋上でまったく異様な光景を作り出した。しかし、それが胸に迫るのは、不思議だ。
 山田のほうは、最初に登場。舞台上にカセットを並べていく。そこから鳥の声らしき音。意表を突く登場からモダンダンスのような、しなやかな舞い。二作目は、黒いスーツ。現代音楽とのコラボレーション。三作目は鍛えられた裸体で登場。桜坂プランタでは、電気仕掛けの人形のような、まったく違うタイプの作品を演じ、多様性を見せた。
 これらのソロパフォーマンスに重要な役割を果たしているのが音楽だ。音楽は、丹野とギタリストの松本じろ。山田に現代音楽家の足立智美がコラボレーション。松本は、幅広いジャンルをこなす。特にギターを津軽三味線のようにかき鳴らす演奏は圧巻。足立は、オリジナル楽器による即興演奏でノイズサウンドを繰り出す。自分のバンドを持ち、また、批評活動も行っている。
 桜坂プランタで行われたライブでは、県立芸大出身の地元パフォーマンスグループ「女体体操」や振付師・宮平剛仁の舞踊もあり、沖縄にも身体表現の豊かな素地があることを示した。
 今回のSSW公演および関連イベントは、沖縄にも新たな身体表現が生まれることを十分予感させた。


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